セロトニンを増やそう!
脳の中では、ニューロン(神経細胞)のネットワークが膨大な情報を電気シグナルとしてやりとりしている。そのやりとりによって、我々の体は動いている。このニューロンとニューロンの間で情報をやりとりするときに欠かせないのが脳内神経伝達物質で、100種類上あるとされています。現在その働きが確認されているのは25種類ほど。セロトニンはその1つで、体温調節、ホルモン分泌に関与するだけでなく、不安やイライラを抑えて精神を安定させたり、沈んだ気持ちを明るくしたり、穏やかな幸せ感をつくる作用があるとされています。
5年ほど前から、セロトニンが足りなくなるとうつ病になりやすいことが分かってきました。今やうつ病の新薬のほとんどは、脳内にあるこのセロトニン量を増やすものです。
一方で、セロトニンは脳内で出せることも分かってきました。またそれは、笑ったり、小さな感動で出ることが判明しています。だから、みんなが自分でセロトニンが出るような生き方をすればいいわけです。
日頃から小さな感動をキャッチしていく心構えが大事であり、道の端に咲いている小さな花をみつけて「きれいだな」、マッサージを受けて「気持ちいいな」と思えば、セロトニンが出てくるのです。
我々の体には、交感神経と副交感神経からなる自律神経が張り巡らされていて、呼吸や脈拍、血圧、発汗、消化、ホルモンの分泌など、体の様々な機能をコントロールしている。交感神経は、がんばる時に使ういわば「戦う神経」で、血管を収縮して血圧を上げる。だから、我慢してがんばってばかりいると、セロトニンが出づらくなるばかりか、血液の循環が悪くなり、脳卒中や心筋梗塞、脳血管性の認知症になりやすいといわれています。
健康を維持するためにも、発想を豊かにするためにも、1日わずかな時間でいいから、少しほっとして副交感神経を刺激することが大切だ、という意識を持って欲しいということです。
もう1つの脳内神経伝達物質〝オキシトシン" です
オキシトシンは約20年前からその存在が分かっていて、子宮収縮作用があることから出産時に陣痛促進剤として使われたり、母乳を分泌させたりする薬として日本でも使われてきました。しかし、最近は新たに心にも影響を及ぼすことが分かってきた。オキシトシンが増えると、人に対する信頼や誠実さ、寛大さが高まる、ということが様々な実験や研究で明らかになっています。
男女に関係なく、好きという感情を抱いたり、人に親切にしたり、スキンシップをしている時も脳内で分泌されることが分かっています。ほかの人を幸せにしようと思ったり、人のために自分の持っている力の一部を使ってあげたりすることで、オキシトシンが分泌されると、信頼感が高まる。そのせいか、苦手な人がなくなっていき、ストレスを緩和する効果もあるとされています。
日本ではまだ認められていませんが、欧米ではオキシトシンの点鼻薬が売られていて、日本でも輸入品がネットで売られています。理想はオキシトシンが分泌されるような習慣を身につけておくことですが、どうしても足りない人は、オキシトシン・スプレーを鼻からひと吹きするのもいいかもしれません。
みんながちょっと肩の力を抜いて、セロトニン、オキシトシンが分泌されるように発想の転換をすれば、生き方が少し楽になって、経済もよくなるでしょう。経済は全体がちょっと躁状態になっている方が、企業も見込みをちょっと上方修正しようとか、消費者も買っちゃおう、旅行に行っちゃおうとなって動き出す。本人の健康にもいいし、その家族も前向きに明るくなり、免疫力が高まって、ひいては日本の医療費増大をも抑制することになるのです.
皮膚刺激とオキシトシン
皮膚にはさまざまな種類の受容体が存在しています。痛みを感知する受容体や、ぬくもりを感知する受容体、軽く触れられたのを感知する受容体などです。触覚刺激やぬくもりは 『安らぎ』 のシステムを活性化し、幸福感や恍惚感をもたらします。
『タッチ』 は知り合い同士の親しい関係の表れです。言葉を用いずに、身体的なふれあいで気持ちを表現することは、誰でも無意識でしていることです。手をつないで歩いたり、肩をたたいて元気づけたり、背中をやさしくなでたり、頬をなでたり。皮膚による身体的接触が、友好的な関係に欠かせないものだということを感覚で知っているからなのでしょう。
『タッチ』や体のふれあいがオキシトシンを放出させることを考えれば、相互的な快いタッチを交せる人の関係は、感情的絆をつくるだけでなく、お互いの健康を増進しオキシトシンによる抗ストレス効果を促していると思われます。
皮膚の刺激を通じてオキシトシンの放出を促すための最もスタンダードな方法として、指圧・マッサージがあります。施術によりオキシトシン分泌が刺激されることが動物実験で報告されています。